こんにちは、靴ケア手帖のTです。
登山靴を購入したときや、雨の日の登山を予定しているときに気になるのが、防水スプレーの選び方です。
登山靴用の防水スプレーを探してみると、モンベル、ニクワックス、グランジャーズ、コロニルなど、さまざまな製品が見つかります。
ただ、普段履きのスニーカーとは違い、登山靴には天然皮革、ヌバック、ナイロン、合成繊維などが組み合わされていることも多く、
GORE-TEX(ゴアテックス)のような防水透湿素材を使ったモデルもあります。
そのため、登山靴の防水スプレーは、撥水効果の高さだけでなく、靴の素材と防水透湿構造への適合性を優先して選ぶことが大切です。
私が特に注意したいのは、「登山靴用だから何にでも使える」と考えてしまうこと。実際には、靴メーカーが指定するケア方法と、スプレー側の使用可能素材を確認する必要があります。
この記事では、登山靴の防水対策に使えるおすすめ7製品を比較しながら、素材別の選び方、正しいかけ方、かけ直す頻度まで詳しく紹介します。
この記事で分かること
- 登山靴向け防水スプレーおすすめ7製品の特徴
- 革・ナイロン・GORE-TEXに合う選び方
- 防水スプレーの正しいかけ方と注意点
- 撥水効果を保つための使用頻度と手入れ方法
登山靴用防水スプレーの選び方
登山靴の防水スプレーを購入する前に、確認しておきたいポイントがあります。
重要なのは、靴の表面に使われている素材と、内部に防水透湿素材が使われているかどうかです。まずは、その違いを押さえておきましょう。
登山靴のアッパー素材を確認
登山靴の表面部分は、アッパーと呼ばれます。アッパーには複数の素材があり、それぞれ適したお手入れ方法が異なります。
例えば、スムースレザーは表面が比較的滑らかな天然皮革です。水や汚れを弾くためのケアに加えて、革の乾燥状態に応じた保革も必要になります。
一方、ヌバックやスエードは、革の表面を起毛させた素材です。独特の毛並みが特徴ですが、油分の多いケア用品を使うと、色が濃くなったり毛足が寝たりする場合があります。
ナイロンやポリエステルなどの化学繊維は、軽量な登山靴によく使われています。
こうした素材には、布地や合成繊維への使用が認められた撥水剤が候補になります。
素材別に確認したいこと
- スムースレザー:天然皮革への対応と保革方法
- ヌバック・スエード:起毛革への対応と風合いの変化
- ナイロン・ポリエステル:合成繊維への対応
- 複合素材:使用されている各素材への適合性
登山靴では、革とナイロンを組み合わせたモデルも珍しくありません。
一部分だけに使えるスプレーを靴全体へ吹きかけると、別の素材でシミや変色が発生する可能性もあります。
まずは靴の取扱説明書やメーカーの商品ページで、アッパーの素材を確認してみてください。
GORE-TEX搭載靴は適合性を優先
GORE-TEXを使用した登山靴では、防水と透湿という2つの働きを考える必要があります。
防水は外部からの水の侵入を防ぐ働き、透湿は靴内部の水蒸気を外へ逃がす働きです。
ここで覚えておきたいのが、GORE-TEXの防水膜と、靴表面の撥水加工は別のものだということ。
防水膜が正常でも、表面の撥水性が低下するとアッパーが水を含みやすくなります。すると、靴が重く感じられたり、内部の蒸れにつながったりする場合があります。
GORE-TEX公式では、靴表面が水を弾かなくなった場合、水性のスプレータイプ、特にポンプ式の撥水回復剤を使う方法が案内されています。
また、防水ワックスやグリスは透湿性に影響する可能性があるため、使用しないよう注意されています。
(出典:GORE-TEX公式「フットウェアのお手入れ方法」)
GORE-TEX搭載靴での注意点
市販の防水スプレーに「透湿性を損なわない」と書かれていても、その商品がすべてのGORE-TEX搭載靴に使えるとは限りません。GORE-TEX公式の推奨方法と、靴メーカーが指定する使用方法を優先してください。
特に、革と防水透湿素材を組み合わせた登山靴では、革のお手入れ方法も合わせて確認したいところです。
ゴアテックスの靴について詳しく知りたい方は、ゴアテックスの靴に防水スプレーは必要なのかを解説した記事も参考にしてください。
防水と撥水の違いを知る
市販されている防水スプレーの多くは、靴の表面に水を弾く働きを与える撥水剤です。
撥水処理をすると、水滴が表面で丸くなって転がりやすくなります。また、泥や水分を含んだ汚れが付着しにくくなることも期待できます。
ただし、防水スプレーを吹きかけたからといって、普通の靴が完全防水になるわけではありません。
例えば、靴底との接着部分に隙間があったり、生地に穴が開いていたりすれば、そこから水が入る可能性があります。
長時間の雨や水たまりへの浸水でも、靴の構造によっては水の侵入を防ぎきれません。
防水スプレーは、登山靴が本来持っている防水性能を補助し、表面の撥水状態を維持するための用品です。
雨天の登山では、靴の防水構造に加えて、靴底の状態やレインパンツとの組み合わせなども重要になります。
乾燥時間と使いやすさも確認
登山靴の防水スプレーは、製品によって使用方法が違います。
乾いた靴に使うものもあれば、洗浄後の湿った状態で使用する製品もあります。
また、エアゾール式のスプレー缶と、ポンプ式のボトルでは、噴霧方法や取り扱いも異なります。
例えば、登山の前日に手入れをするなら、十分な乾燥時間を確保できる製品が使いやすいでしょう。
一方、登山から帰宅した後に洗浄と撥水処理をまとめて行いたいなら、湿った靴に使用する水性タイプも候補になります。
ただし、どちらの場合も、乾燥が完了する前に履かないことが基本です。
使用する季節や気温、湿度によって乾燥にかかる時間も変わるため、登山当日の出発直前に慌てて処理するのは避けたいですね。
登山靴の防水スプレーおすすめ7選
ここからは、登山靴の防水・撥水ケアで比較したい7製品を紹介します。
今回はメーカーが公開している対応素材、使用方法、特徴を基準に選びました。
同じ条件で撥水性能を実測したランキングではなく、登山靴の種類や用途によって選ぶための比較です。
| 製品名 | 主な用途 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| グランジャーズ フットウェアリペルプラス | 革・起毛革・布・防水透湿素材 | 水性ポンプ式で幅広い素材に対応 | 湿った靴への施工が基本 |
| ニクワックス ファブリック&レザースプレー | 革と合成繊維の複合素材 | 組み合わせ素材向けの撥水剤 | 国内の流通状況を確認 |
| ニクワックス ヌバック&スエードスプレー | ヌバック・スエード | 起毛革の風合いと透湿性に配慮 | 国内の流通状況を確認 |
| コロニル カーボンプロ | 革・布・防水透湿素材 | 持続性を重視した防水処方 | 靴メーカーの指定方法も確認 |
| モンベル O.D.メンテナンス はっ水スプレー | メーカー指定の対応製品 | アウトドア用品向けの撥水剤 | 一般的な布靴や皮革には使用制限あり |
| コロンブス アメダス420 | 革・起毛革・ナイロン・布地 | 防水・撥油・防汚に対応 | GORE-TEXでは靴側の指定を優先 |
| M.モゥブレィ プロテクターアルファ | 革・起毛革・ナイロン・布地 | 幅広い靴や布製品に使える | 特殊素材への適合を確認 |
商品名が似ていても、成分や使用条件が異なる場合があります。販売時期による仕様変更もあるため、最終的には購入する製品の表示を確認してください。
グランジャーズ リペルプラス
最初に紹介するのは、グランジャーズの「フットウェアリペルプラス」です。
登山靴やアウトドアシューズの撥水処理を目的とした、水性のスプレータイプ。メーカーはGORE-TEX、eVent、天然皮革、ヌバック、スエード、布地などへの使用を案内しています。
特徴は、防水透湿素材だけでなく、さまざまなアッパー素材を対象としていることです。
例えば、革とナイロンを組み合わせたトレッキングシューズを持っている場合、比較候補に入れやすい製品でしょう。
使い方は、汚れを落とした湿った状態の靴に均一に吹きかけ、余分な液を布で取り除いてから乾燥させる方法です。
革や起毛革に配慮したコンディショニング成分も特徴として案内されています。ただし、革の種類によっては色や質感が変化する可能性があるため、試し塗りは欠かせません。
こんな方におすすめ
GORE-TEX搭載靴や複合素材の登山靴で、水性のポンプ式撥水剤を探している方に向いています。必ず靴メーカーの指定と照合して使用してください。
ニクワックス ファブリック&レザー
ニクワックスの「ファブリック&レザースプレー」は、革と合成繊維を組み合わせた靴向けの撥水剤です。
登山靴では、つま先やかかとに革を使い、側面にナイロンなどを配置したモデルがあります。
こうした複合素材の靴は、一部分だけに適したケア用品を選ぶと使い分けが難しくなりがちです。
ファブリック&レザーは、そのような組み合わせ素材を想定している点が特徴になります。
メーカーは、繊維や革に撥水性を与えながら、透湿性の維持にも配慮した設計を案内しています。
また、GORE-TEXなどの防水透湿素材を使用した複合素材の靴にも推奨されています。
基本的には靴を洗浄した後、濡れた状態で施工します。乾いた靴に使う一般的なエアゾール式スプレーとは手順が異なるため、注意が必要です。
国内で販売されてきたスプレータイプには125mLの製品がありますが、現在は販売店によって在庫が限られる場合があります。スポンジ式など別タイプを選ぶ際も、商品ごとの使い方を確認してください。
革と化学繊維を組み合わせた登山靴で、素材への適合を重視したい方におすすめです。
ニクワックス ヌバック&スエード
ヌバックやスエードを使った登山靴には、ニクワックスの「ヌバック&スエードスプレー」も候補になります。
この製品は起毛革向けの撥水剤で、素材独特の毛並みと透湿性に配慮した設計が特徴です。
ヌバックの登山靴は、使い込むことで革の表面に泥やホコリが入り込みやすくなります。
そこで、まずは汚れを落とし、必要に応じて撥水処理を行うことが大切です。
一般的な革用ワックスや油分の多いクリームを塗ると、起毛革の風合いが変化することがあります。
その点、起毛革向けに設計された製品なら、素材に合ったお手入れ方法を選びやすくなります。
ただし、専用品であっても色が濃くなる可能性はあります。淡い色のヌバックやスエードでは、目立たない部分で確認してから使用してください。
国内のスプレータイプは流通状況が変わることがあり、同シリーズにはスポンジ式も存在します。購入時は容器の種類と使用方法を確認しましょう。
起毛革の基本的な防水ケアについては、スエード靴用防水スプレーのおすすめ7選と使い方でも紹介しています。
コロニル カーボンプロ
防水効果の持続性を重視するなら、コロニルの「カーボンプロ」も比較したい製品です。
容量は300mL。国内公式では、スムースレザー、スエード、ヌバック、布地、合成皮革、防水透湿素材などに対応すると案内されています。
特徴は、メーカー独自のカーボンテクノロジーによる、伸縮性のある保護膜です。
登山靴は歩くたびにつま先や甲の部分が曲がります。こうした屈曲部分にも保護膜が密着するよう設計されている点が魅力です。
メーカー公表の防水効果の持続期間は約4週間。ただし、これはすべての登山環境で4週間持続するという保証ではありません。
雨の中を長時間歩いたり、泥や岩との摩擦を繰り返したりすれば、撥水性は早く低下する可能性があります。
また、国内公式で案内されている現行品はフッ素不使用の処方です。旧仕様や並行輸入品とは表示が異なる場合があります。
注意したいのは、防水透湿素材に対応するという表示だけで、すべてのGORE-TEX搭載登山靴に使用できるとは決められないこと。
GORE-TEX公式の水性ポンプ式という推奨方法と異なるため、GORE-TEX搭載靴では靴メーカーの指示を確認しましょう。
一般的な革や布製の登山靴で、持続性と対応素材の幅を重視したい方に向いています。
モンベル O.D.メンテナンス
登山用品メーカーのモンベルから販売されているのが、「O.D.メンテナンス はっ水スプレー」です。
170mLと330mLのタイプがあり、ナイロン、ポリエステル、綿、ウールなどの布製品を主な対象としています。
現行品はPFASを使用しない処方で、アウトドア用の衣類や装備品の撥水ケアに利用できます。
ただし、ここで重要な注意点があります。
モンベルのはっ水スプレーは、すべての登山靴に無条件で使える製品ではありません。
公式の製品説明には、皮革、人工皮革、一般的な布靴、靴のゴム底など、使用できない素材や製品が記載されています。
一方、モンベル製の合成繊維・皮革・人工皮革を組み合わせた登山靴には使用できるとの案内もあります。ただし、革部分では変色や風合いの変化が起こる可能性があります。
そのため、モンベル製の登山靴で使用を検討している場合でも、靴のモデルと現行スプレーの注意事項を照合してください。
また、革製ブーツでは保革処理が必要になる場合があります。撥水剤だけで革のお手入れがすべて完了するわけではありません。
(出典:モンベル公式「登山靴のお手入れ方法」)
モンベル製品を使用していて、メーカーの案内に沿ってメンテナンス用品を選びたい方におすすめです。
コロンブス アメダス420
コロンブスの「アメダス420」は、幅広い素材に使える防水・撥油・防汚スプレーです。
420mLの大容量で、一般的なスムースレザー、スエード、ヌバック、合成皮革、ナイロン、布地などに対応しています。
フッ素系の撥水・撥油成分を利用し、水分だけでなく油分を含む汚れの付着も抑えることを目的としています。
登山靴だけでなく、普段履きの靴やバッグなどにも利用できる点が特徴です。
例えば、登山靴と普段の革靴を両方持っている場合、適合する素材であれば一本で手入れできる可能性があります。
メーカーは、靴から約20〜25cm離して均一にスプレーする方法を案内しています。
ただし、革の種類によってはシミや色落ちが発生することもあります。特に起毛革では、目立たない部分で試してから使用しましょう。
また、アメダス420はエアゾール式です。GORE-TEX搭載靴では、靴メーカーが認める方法との一致を確認する必要があります。
大容量を重視し、登山靴以外の靴にも使える防水スプレーを探している方に向いています。
M.モゥブレィ プロテクターアルファ
M.モゥブレィの「プロテクターアルファ」は、革製品や布製品に対応する防水・防汚スプレーです。
スムースレザー、スエード、ヌバック、ナイロン、キャンバスなど、幅広い素材を対象としています。
特徴は、靴の通気性や革の柔軟性に配慮しながら、水分や汚れの付着を抑えることです。
容量も複数用意されているため、使う回数に合わせて選びやすいでしょう。
例えば、登山靴一足だけに使うなら小容量を検討できますし、複数の靴を手入れするなら大きめのサイズも候補になります。
ただし、一般的な靴用防水スプレーとして幅広い素材に使えることと、登山靴のあらゆる防水構造に対応することは別です。
特にGORE-TEXなどの防水透湿素材を使用した靴では、メーカーの指定方法を確認してから選んでください。
登山靴と日常用の靴で、ケア用品をなるべく兼用したい方におすすめです。
今回の7製品以外も比較したい方は、靴用防水スプレーおすすめ10選と素材別の選び方も参考にしてください。
登山靴の素材別に選ぶポイント
ここまで7製品を紹介しましたが、最終的にどれを選ぶかは、登山靴の構造によって変わります。
ここでは、代表的な素材ごとに考え方を見ていきましょう。
革製登山靴に使う場合
スムースレザーの登山靴では、撥水処理と革の保護を分けて考えることが大切です。
革は、乾燥によって硬くなったり、ひび割れが発生したりする場合があります。
そのため、汚れを落とした後、必要に応じて保革剤を使用し、そのうえで適した撥水処理を行います。
ただし、すべての革に同じクリームを使えるわけではありません。製品によっては、革の表面加工や防水構造に適さないこともあります。
特に革製のGORE-TEX搭載登山靴では、ワックスや油分を含むケア剤が透湿性に影響する可能性があります。
革製だからという理由だけで通常の靴クリームや防水ワックスを塗るのではなく、靴メーカーの説明を優先してください。
また、保革剤と防水スプレーの使用順序も製品によって異なる場合があります。両方使う場合は、それぞれの説明を確認することが必要です。
ヌバックやスエードの場合
ヌバックやスエードの登山靴では、毛並みを維持することも重要になります。
ヌバックは革の表面を細かく起毛させた素材で、スエードは一般的に革の裏面を起毛させたものです。
どちらも独特の質感が魅力ですが、通常の革用クリームを使うと毛足が寝たり、色が濃くなったりする可能性があります。
そのため、起毛革に対応した防水スプレーを選ぶことが基本です。
汚れが残っている場合は、起毛革用のブラシなどで優しく取り除きます。その後、製品が指定する状態で撥水剤を使用してください。
乾燥後にブラッシングすると、毛並みを整えやすくなります。
ただし、起毛革は濡れることで色の見え方が変わる場合があります。新品の登山靴でも、必ず目立たない部分で試してから全体に使用しましょう。
ナイロンや化学繊維の場合
軽量な登山靴には、ナイロンやポリエステルなどの化学繊維がよく使われています。
こうした靴では、表面の撥水加工が低下すると、生地が水を含んで重く感じられることがあります。
そこで、布地や合成繊維に対応した撥水剤が候補になります。
ただし、ナイロン製だからといって、衣類用の撥水剤をそのまま使えるとは限りません。
登山靴には、接着剤、補強材、ゴム、合成皮革など複数の素材が組み合わされています。
布地には対応していても、別の部品には使用できない製品もあるため注意が必要です。
また、撥水剤を使用する前に泥やホコリを落としておくことも忘れないでください。
汚れが残ったままでは、撥水剤が十分に定着せず、本来の効果を発揮しにくくなります。
GORE-TEX登山靴の場合
GORE-TEX搭載登山靴で最も大切なのは、表面の撥水性と内部の防水膜を混同しないことです。
例えば、雨に当たったときに表面が黒っぽく濡れて見えても、それだけでGORE-TEXの防水膜が壊れたとは判断できません。
まずは靴の汚れを落とし、乾燥させた後に撥水状態を確認します。
水滴が表面に乗らず、生地へ広がるようになっていれば、撥水性が低下している可能性があります。
その場合は、靴メーカーが認める撥水回復剤を使用しましょう。
◆Tのワンポイントアドバイス
私なら、GORE-TEX搭載靴では「一番よく水を弾く商品」よりも、靴メーカーの指定に合うことを優先します。表面の撥水性を回復させたいだけなのに、透湿性や革の風合いに影響するケア用品を選んでしまっては意味がありません。
なお、靴内部まで水が入る場合は、表面の撥水性だけでなく、靴底との接合部や生地の損傷なども確認する必要があります。
登山靴の防水スプレーのかけ方
防水スプレーは、使い方によって仕上がりが変わります。
ここでは、一般的な乾いた靴に使うスプレーを想定した手順を紹介します。水性タイプなど、湿った靴への施工を指定している製品では、その説明を優先してください。
靴ひもを外して汚れを落とす
最初に行いたいのが、登山靴の汚れ落としです。
登山後の靴には、泥、砂、ホコリなどが付着しています。特につま先、靴底の周辺、靴ひもの下にあるタン部分は汚れがたまりやすい場所です。
まず靴ひもを外し、ブラシなどを使って表面の汚れを落としましょう。
泥が乾いている場合は、靴を傷つけない程度にブラシで払い落とします。落ちにくい汚れは、靴メーカーが認める方法で洗浄してください。
ただし、天然皮革の靴を長時間水につけることは避けたいところです。洗浄方法は素材によって異なります。
汚れが残った状態でスプレーを重ねると、撥水剤の働きが十分に発揮されない可能性があります。
防水スプレーを使う前の掃除は、仕上がりを左右する大切な作業です。
使用前の乾燥状態を確認する
汚れを落とした後は、防水スプレーの使用説明を確認してください。
一般的なエアゾール式では、靴を十分に乾かしてから施工する製品が多くあります。
一方、ニクワックスやグランジャーズなどには、洗浄後の湿った靴へ使用するタイプもあります。
この違いを知らず、すべての防水スプレーを同じ方法で使うのは避けましょう。
また、濡れた登山靴を乾燥させる場合は、風通しのよい日陰で自然乾燥させる方法が基本です。
ストーブやドライヤーの熱を直接当てると、革の変質や接着部分への影響が出る場合があります。
靴の内部まで濡れている場合は、取り外せる中敷きを外し、必要に応じて吸水紙を使って乾燥を助けましょう。
指定された距離から吹きかける
防水スプレーを使用するときは、製品が指定する距離と使用量を守ってください。
一般的なエアゾール式では、靴から15〜25cm程度離して使用する製品がありますが、これはあくまで一例です。
近すぎる位置から大量に噴射すると、液だれやシミの原因になる可能性があります。
また、つま先やかかとなど、同じ場所だけに集中して吹きかけることも避けましょう。
容器を動かしながら均一に施工することが基本です。
ただし、水性ポンプ式では、湿った靴へ吹きかけた後に余分な液を布で拭き取る製品もあります。
そのため、「何cm離すか」「何回吹きかけるか」は、必ず使用する商品の説明を優先してください。
防水スプレーは必ず安全な環境で使用
エアゾール式の防水スプレーには、吸い込むと健康に悪影響を及ぼす成分や、引火性のある成分が含まれる場合があります。密閉した室内や玄関、車内などでの使用は避け、製品の指示に従って風通しのよい屋外で使用してください。
風向きを確認して噴霧を吸い込まないようにし、火気を近づけないことも重要です。マスクなどの保護具についても製品表示に従いましょう。
十分に乾燥させて仕上げる
スプレーした後は、製品指定の時間を守って十分に乾燥させます。
乾燥時間は、成分、噴霧量、気温、湿度によって変わります。
表面が乾いて見えても、すぐに履いてよいとは限りません。
例えば、コロニルのカーボンプロでは、メーカーが約20〜30分の乾燥時間を目安として案内しています。
一方、別の製品では、完全乾燥までさらに時間を必要とする場合もあります。
そのため、登山当日の朝に急いで施工するより、前日までに準備しておくほうが安心です。
スムースレザーでは乾燥後に柔らかい布で仕上げ、スエードやヌバックではブラッシングするなど、素材別の仕上げ方法も確認しましょう。
なお、防水スプレーを使用した直後の靴は、子どもやペットが触れない場所で、製品の指示に従って乾燥させてください。
水滴で撥水状態を確かめる
十分に乾燥した後は、目立たない部分で少量の水を使い、表面の撥水状態を確認できます。
水滴が丸くなって表面を転がるようなら、撥水性が働いていると考えられます。
一方、水が生地へ広がって吸収される場合は、撥水性が十分ではない可能性があります。
ただし、撥水状態だけで靴の防水性能すべてを判断することはできません。
防水膜や縫い目の状態、靴底との接合部分なども、雨天時の浸水に関係するためです。
水を弾かないからといって、その場で大量に重ね吹きするのは避けましょう。
まずは汚れや乾燥状態、使用方法を確認し、必要に応じてメーカー指定の再施工を行ってください。
登山靴の防水スプレーの頻度
防水スプレーのかけ方が分かると、次に気になるのが使用頻度です。
ただし、登山靴の場合は、毎週何曜日にスプレーするといった決め方が必ずしも適しているわけではありません。
撥水性が落ちたときに使う
登山靴の防水スプレーは、基本的に撥水性が低下したときに使うと考えると分かりやすいでしょう。
登山では、土、岩、草木との接触や、雨による水濡れが繰り返されます。
また、歩くたびに靴の甲部分が曲がり、摩擦も発生します。
こうした使用環境によって、表面の撥水効果は徐々に低下していきます。
例えば、月に一度しか登山しない場合と、毎週雨の山道を歩く場合では、必要な手入れの頻度が違って当然です。
私なら、登山から帰宅した後に汚れを落とし、乾燥後の撥水状態を確認してから、再施工するか判断します。
カレンダーで日数を決めるよりも、登山回数、雨に当たった時間、靴表面の撥水状態で判断することが大切です。
新品の登山靴には必要なのか
新品の登山靴を購入すると、履き始める前に防水スプレーをかけたほうがよいのか迷うことがあります。
結論として、新品だから必ず追加の撥水処理が必要というわけではありません。
購入時点ですでに撥水加工が施されているモデルもあるためです。
特にGORE-TEX搭載靴では、表面の撥水性が保たれているなら、最初から防水スプレーを重ねる必要がない場合もあります。
まずは靴メーカーの取扱説明書を確認しましょう。
一方、メーカーが使用前の撥水処理を案内している場合は、その指定に沿った製品を使用してください。
新品の靴でも、色の薄い革や特殊加工された素材では、スプレーによって見た目が変わる可能性があります。
最初の一回だからこそ、素材の確認と試し塗りを丁寧に行いたいですね。
雨の日の登山後は状態を確認
雨の日に登山をした後は、防水スプレーをかけ直す前に、靴の状態を確認してください。
まず泥や砂を落とし、靴の内側まで十分に乾燥させます。
その後、表面の撥水性が低下しているかを確認しましょう。
長時間雨に当たった後は、通常より早く撥水効果が低下している可能性があります。
ただし、雨に濡れたからといって、必ず毎回スプレーが必要というわけでもありません。
汚れを落とすだけで水を弾く状態が戻ることもあります。
また、コロンブスのアメダスでは、よく履く靴について1〜2週間に1回程度の使用を目安として案内していますが、これは製品ごとの目安であり、登山靴全般の共通ルールではありません。
登山靴では、使用環境が厳しいことも多いため、回数だけに頼らず状態を見て判断しましょう。
◆Tのワンポイントアドバイス
防水スプレーは、頻繁にかければ必ず性能が高まるものではありません。私なら、登山後のブラッシングと乾燥を基本にして、必要なタイミングで撥水処理を追加します。余分なスプレーを使わず、靴の状態も確認できる方法だと思います。
登山靴の防水ケアで注意したいこと
登山靴を長く使うには、撥水処理だけでなく、乾燥や保管、靴底の点検も欠かせません。
ここでは、防水スプレーを使う際に見落としやすいポイントを紹介します。
防水スプレーのかけすぎを避ける
水を弾かせたいからといって、一度に大量のスプレーを吹きかけるのはおすすめしません。
過剰な使用は、液だれやシミ、白い跡が残る原因になる場合があります。
また、素材によっては色の変化や風合いへの影響も考えられます。
特にヌバックやスエードは、細かな毛足によって色の見え方が変わるため注意が必要です。
製品が指定する使用量を守り、必要以上に重ね吹きしないようにしましょう。
なお、乾燥後に撥水性が十分でない場合でも、すぐに大量のスプレーを追加するのではなく、使用方法や靴の汚れの状態を確認してください。
濡れた靴を急激に乾かさない
登山後に靴が濡れていると、早く乾かしたくなるものです。
しかし、ドライヤーやストーブなどで急激に熱を加えると、素材の変形や接着部分の劣化につながる場合があります。
天然皮革では、熱によって革が硬くなる可能性もあります。
基本的には、泥や汚れを落とした後、風通しのよい日陰で乾燥させましょう。
内部が濡れている場合は、取り外せる中敷きを外し、吸水紙などを利用して水分を取り除きます。
新聞紙を使用するとインクが色移りする可能性もあるため、無地の紙を使うほうが扱いやすいでしょう。
また、乾燥が不十分な状態で収納すると、ニオイやカビの原因にもなります。
靴底の劣化にも注意する
登山靴で特に重要なのが、靴底の状態です。
防水スプレーで表面をきれいに保っていても、靴底がすり減っていたり、接着部分が劣化していたりすれば、安全に使えるとは限りません。
特に、長期間保管していた登山靴では、見た目に問題がなくてもソールが劣化している場合があります。
登山前には、靴底の剥がれ、深いひび割れ、ゴムの摩耗、縫い目や金具の状態なども確認してください。
防水スプレーは、こうした構造的な傷みを修復する用品ではありません。
ソールの剥がれやアッパーの破れがある場合は、登山で使う前に購入店やメーカーへ相談しましょう。
靴を長く使うには、表面の撥水ケアと、安全に関わる部分の点検を組み合わせることが大切です。
登山靴の防水スプレーのよくある疑問
最後に、登山靴の防水スプレーについて、購入前や使用時に気になりやすい疑問をまとめます。
登山靴の防水スプレーに関するよくある質問(FAQ)
Q1. 登山靴に普通の防水スプレーを使っても大丈夫ですか?
A. 普通の靴用防水スプレーでも、登山靴の素材に対応していれば使える場合があります。ただし、GORE-TEXなどの防水透湿素材を使った登山靴では、靴メーカーが指定する撥水剤を優先してください。「靴用」と書かれているだけで判断しないことが大切です。
Q2. 登山靴の防水スプレーは何日おきにかけますか?
A. 一律に何日おきと決める必要はありません。登山回数、雨に当たった時間、靴表面の摩擦などで撥水性の低下は変わります。汚れを落とした後、水を弾かなくなっている場合に、メーカー指定の方法で再施工するとよいでしょう。
Q3. モンベルの防水スプレーは登山靴に使えますか?
A. モンベルのO.D.メンテナンス はっ水スプレーは、メーカーが指定する一部の登山靴に使用できます。ただし、一般的な布靴や皮革などには使用制限があり、モンベル製の複合素材の登山靴でも変色や風合いの変化に注意が必要です。対象の靴と製品表示を必ず照合してください。
Q4. GORE-TEXの登山靴にも防水スプレーは必要ですか?
A. GORE-TEX搭載靴でも、表面の撥水性が低下した場合は撥水処理が役立ちます。ただし、新品のうちから必ず追加する必要はありません。GORE-TEX公式は、水性のポンプ式撥水剤を案内しています。靴メーカーの指示を確認してから使用しましょう。
Q5. 登山靴に防水スプレーをかければ雨でも濡れませんか?
A. 防水スプレーだけで完全に水の侵入を防げるわけではありません。主な目的は靴表面の撥水性を高めることです。防水膜の損傷、縫い目や靴底の隙間、履き口からの浸水などは、防水スプレーで解決できない場合があります。雨天の登山では靴の防水構造や状態も重要です。
まとめ
登山靴の防水スプレーを選ぶ際は、撥水効果の高さだけでなく、靴の素材と防水透湿構造への適合性を確認することが大切です。
今回紹介した7製品にも、それぞれ向いている用途があります。
- グランジャーズ フットウェアリペルプラス:水性ポンプ式で防水透湿素材にも対応する製品を探す方
- ニクワックス ファブリック&レザースプレー:革と合成繊維を組み合わせた登山靴を手入れしたい方
- ニクワックス ヌバック&スエードスプレー:起毛革の風合いに配慮したい方
- コロニル カーボンプロ:幅広い素材への対応と持続性を重視する方
- モンベル O.D.メンテナンス:メーカー指定の登山靴に、指定された方法で使いたい方
- コロンブス アメダス420:登山靴と日常用の靴を兼用して手入れしたい方
- M.モゥブレィ プロテクターアルファ:幅広い靴や布製品で使えるものを探している方
ただし、これらはメーカー公表の用途に基づく選び分けであり、同一条件で測定した撥水性能の順位ではありません。
また、防水スプレーは一度かければ永久に効果が続くものではなく、履く回数や天候によって撥水性は低下していきます。
登山から帰宅した後は、汚れ落としと乾燥を基本にして、必要なタイミングで撥水処理を行いましょう。
さらに、靴底の摩耗や接着部分の劣化など、安全に関わる部分の確認も忘れないことが重要です。
私が最も大切だと思うのは、「最も撥水力が高そうな製品」ではなく、「手持ちの登山靴に適した製品」を選ぶことです。
登山靴は、山道を歩く足元を支えてくれる大切な道具。無理のない手入れを続けながら、長く快適に使っていきたいですね。
製品の対応素材や使用方法は変更される場合があります。正確な情報は各メーカーの公式サイトや製品表示をご確認ください。高価な登山靴や特殊素材で判断に迷う場合は、靴メーカーや専門のシューケア店へ相談することをおすすめします。